前節、バレンシアに0-1で競り負けて今季初の公式戦連敗となった3位のマドリーは、11位のラージョとのマドリード自治州ダービーで連敗ストップを狙った。
前半の低調なパフォーマンスに、相手守護神の再三のパラドンに阻まれて0-1の敗戦となった前節だが、その結果以上にヴィニシウスに対するメスタージャの一部の不届き者の人種差別問題が大きな問題に発展。試合終了間際の暴力行為で退場処分を科されたブラジル代表FWへの退場処分は取り消しとなり、今節でのプレーは可能だったが、ヒザの打撲の影響を考慮したクラブはこの試合で招集外に。
そういった中、ヴィニシウスへの連帯を示すと共に、スタンド観戦の若きエースに勇気を与える白星を目指したアンチェロッティのチームは、アラバやモドリッチ、カルバハル、クロースといった主力を復帰させた。
試合前にマドリーの全選手がヴィニシウスのユニフォームを着用し、同選手への連帯を示すと共に改めて人種差別撲滅を訴えてスタートした一戦。
キックオフ直後から攻守両面でアグレッシブさを全面に押し出すラージョが、マドリーに自由なプレーを許さず。中盤での攻防がメインとなった中、イーブンの状況で推移していく。
相手の圧力に苦戦し、なかなか効果的にボールを循環させられないホームチームに対して、アウェイチームはカウンターだけでなく要所で巧みな繋ぎをみせ、より効果的にフィニッシュまで持ち込む。だが、際どいクロスやミドルシュートはGKクルトワの牙城を崩すまでには至らず。
すると、前半半ば過ぎに最初の決定機を迎えたマドリーが見事な決定力を発揮した。31分、主審のドロップボールの流れから相手の隙を見逃さなかったベンゼマが右のバルベルデとのパス交換でボックス右に抜け出す。冷静にGKを右にかわして放ったシュートは相手DFのゴールカバーに阻まれかけたが、そのままゴールネットに吸い込まれた。
エースのゴールで先手を奪ったホームチームは、前に出てきた相手をうまくいなしながらカウンターで追加点を目指す。前半終了間際にはボックス内に抜け出したロドリゴ、クロースの浮き球パスに反応したベンゼマに続けて決定機が訪れたが、ここはスリップやオフサイドによって2点目とはならなかった。
内容はほぼイーブンもマドリーの1点リードで試合は後半に突入。マドリーは立ち上がりからボールを握って主導権を掴む。なかなか攻め切れない場面が目立つ中、56分には左サイドに流れたモドリッチの右足アウトを使った絶妙なクロスにファーのカルバハルが反応するが、このダイレクトシュートは枠を捉え切れず。
以降は互いになかなかフィニッシュまで持ち込めない膠着状態が続く。この流れを受け、アンチェロッティ監督は63分にバルベルデを下げてセバージョス、71分にはモドリッチを下げてアセンシオを投入。フレッシュな選手の投入で試合を決める2点目を目指すが、なかなか決定機まで持ち込めない。
一方、後半に入って積極的に前線の選手を入れ替えてきたラージョはこの交代が終盤の同点ゴールをもたらす。84分、左サイド深くに抜け出してDFナチョをつり出したチャバリアがボックス左に走り込むデ・トーマスに絶妙なマイナスのパスを繋ぐと、元マドリーFWがひざ下の鋭い振り抜きからニア下へ見事な右足シュートを突き刺した。
この失点で苦しくなったマドリーだったが、兄貴分のヴィニシウスに誰よりも勝利を捧げたいロドリゴが値千金の仕事を果たす。89分、相手陣内でのボール奪取から細かくボールを繋ぐと、バイタルエリア中央でセバージョスからパスを受けたロドリゴがペナルティアーク付近まで持ち込んでコースを狙った右足のコントロールシュートをゴール右下隅へ流し込んだ。
そして、若きブラジル代表FWの土壇場の勝ち越しゴールで難敵ラージョを退けたマドリーが、公式戦連敗をストップすると共にヴィニシウスを勇気づける白星を手にした。